IOCA - Our work - インタビュー vol.1

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インタビュー vol.1 桐島訓子さん

8⽉31⽇に渋⾕ヒカリエで実施した「おとなと子どものEGAKU workshop」。
これまで教育機関などで実施することがほとんどであったNPO法人IOCAにとっては、初めての親子でのパブリックイベントとなりました。ワークショップ参加者にその感想をききました。

EGAKU workshopに参加して

null IOCA:今⽇はお忙しいところありがとうございます。渋⾕ヒカリエで実施したEGAKU workshopについて、おふたりのお子様と一緒にご参加いただいた桐島さんにワークショップを通して感じたことなどをざっくばらんにお伺いできればと思います。

EGAKU workshopに興味を持って最初にFacebookのIOCAのページをみた時、「みんな天才!」と思ったんです。あのパステルの感じがすごく綺麗で。シュタイナー教育の作品のような印象も持ちましたね。これは⼼身どちらにとってもすごくよいだろう、参加してみたいなと思って。でも(描く)紙の⼤きさは⼩さいんじゃないの?とその時は思いましたけど。

IOCA:実際に参加されてみてどうでしたか?

ワークショップ全体については、描くことはもちろん、作品を⾒て感じたことなどをシェアするコミュニケーションのやりとりもものすごくよかったです。この⼈がこうした想いでこの作品を描いてこんな発表をして、そしてそのお子さんがこの子でこの作品で・・・というつながりもとても⾯白かったですね。
 
また、「表現に上⼿下⼿はないんだよ」といったあの導⼊の仕⽅方もすごくよかったし、「アーティスト」が鑑賞や創作をする際に、⽅法を⽰すという意味での⼿助けを実際にしてくれたことも大きいと思いました。
Kuniさんが「こんな風に描きたい場合にはこうしたテクニックがあります。でも使わなくてもいいんです」ってやってくれた感じ。普通「アーティスト」というと遠い存在で、個⼈の創作について”教えてくれる”ということはないと思いますから。「アーティスト」が⾝近にいるというのはとても⾯白いアプローチだと思いましたし、こうした⾝近な「アーティスト」がもっといたら、⽇本人の美意はもっと⾼まるのではないかなって思いました。
そして、実際に⾃分で描いてみると、あの時間だったらあの紙の大きさが丁度よかったんだと思いました。40分という限られた時間で描きるにはこの紙の⼤きさでなければ、と。1日かけて描くのならもっと⼤きいものでもありかもしれませんが。

IOCA:ワークショップのなかで意外だったことや発⾒はありましたか?

⼤人の作品かと思ったら子どもの作品だったということが多く、それが意外な発⾒でした。そして、(描いた絵にコメントをしたり、作者が⾃分の作品を発表する)鑑賞ワークを通して、⼦どもは実はとても深く考えている⼀方で、意外と⼤人の方がなにも考えずに描いているなという印象を持ったことも発⾒でしたね。⼤人になると、職業だったり⽣活のスタイルだったり、決まっていることが多いので、割とつきぬけているというかお気楽になれる部分がある。でも、こどもはたくさんの可能性があるからこそ将来に対する恐れもある。さらに⾃分の価値もまだわからない状態だから人にどうみられるか、どう思われるかということについて実は真剣に考えているんですよね。⼦どもは⼤人たちが思っているよりもっと真剣というか。だからこそ⼤人がサポートしてあげたり励ましたり、ということが必要なんだと思いました。そういった意味で、このワークショップは⼦どもと価値観を共有するとてもよい機会だったと思いました。

IOCA:おとなとこどもの違いを、意外性も含めたよい意味で感じることができたというか。

そうそう、⼤人になると⽼人⼒ではないけど、わりといろいろわかってきてふっきれるのですが、⼦どもは色々な知識をつけたり⾃分を形成したりしていくなかで⾃分に対する恐れや不安もあれば期待もある、そんな存在なんだなということを認識したんです。そしてそれをふまえたうえで「⼈」としてきちんと接していかなければと思ったんです。

IOCA:それは桐島さんがもともと思っていたことでもあるんですよね?

いや、今回このワークショップを通して初めてというか改めて認識したことなんです。これまでも、なんとなくわかっていたりとか、どこかの偉い⼈がいいこと言っているなというのはあったとしても、やはり⾃分で体験して腑に落ちないと⾃分の想いにはなっていなかったというか。そういう意味で今回は実際に親⼦で体験したことはすごく大きかったですね。


「こころ」を描く

これまで子ども達は、(小学校受験のために『受験絵画』をさせていたこともあって)お絵描きはやらされているという感じがありました。でも今回のEGAKU workshopは純粋に描く事を楽しんでいたように思いました。

IOCA: やはり通常の受験のため絵のお教室とは違うものですか?

全然違いますね!「こころ」を描くなんてないもの。

IOCA:実は「こころ」を描くのは、心の奥の深いものがでてくる可能性があるのでこわいと思われたりすることもあるんです。テーマとして慎重に扱っているところでもあるんですよね。それはどうでしたか?

「こころ」を描くことに私は抵抗がなかったですし、逆に⾃分の思っている事を出すのはよいのではないかと思いました。⼼の中にあるものを表現するのは、むしろセルフセラピーのようになるのではないかなって。専⾨家ではないので詳しくはわかりませんけど。
東⽇本大震災の影響を受けた地でこのワークショップをすることも意味があるように思いますがどうですか?

null IOCA:震災後に福島県の久之浜の小学校でEGAKU workshopをしたことがあります。午前中は環境教育をやって午後にEGAKU workshopをするという組み合わせで。校⻑先生が6年生に対してこのワークショップを実施してあげたいという想いがあったんです。1年生の頃から彼らは下の学年の⼦をサポートしてみんなとても頑張ってきたので、そのご褒美としてなにかよい経験をさせてあげたいと。その時のテーマは「こころの中にある太陽」でした。どれもすごく⼒強い作品でしたね。ボランティアで⾏った⼤人が驚いたほどです。


創作をするなかで

IOCA:何が正しいかわからないのは⼈生もアートも同じです。でも「⾃分で考える」という習慣を⼤人がだんだんなくしている現状は残念ですよね。「考え⽅がわからない」「考える習慣がない」「考える暇がない」といいながら「考える」機会とその⾏為を失ってきているというか。

そうしたなかで、このEGAKU workshopは⾃分のなかでの美意識や価値観や⼤切にしているものについて考え、内なる感覚を呼び戻すきっかけになったと思いました。あの限られた時間とあの紙の⼤きさで描くことは実はとてもハードで、創作する中でとても集中をしていました。
 
私はヨガをやっているので瞑想の訓練をしているのですが、まさに(EGAKU workshopは)瞑想だと思いました。瞑想の⽬的は内観(⾃分の内部)をみつめて神と宇宙との合一、⾃分が⼤きな存在の中のひとつであることを⾒いだすこと。最近⼀般的にも瞑想の⼤切さが唄われて、色々な種類の瞑想が紹介されてはいますが、やはり瞑想することは難しいと思われている。でも、こうして何かにすごく集中することや、そのなかで自分と向き合っているということこそがまさに瞑想なんですよね。

IOCA:そのときの脳の状態は「フロー」と呼ばれているみたいですよね。新しい発⾒があるときの脳の状態で、そこではストレスもかかっていないけどリラックスもしていない、ちょうど狭間のような状態というか。そうした状態になりながらの今回の創作のプロセスは、どんなものでしたか?

null 今回のテーマである「⾃分のこころ~⼤切にしているもの〜」を意識したときに、まずは⼤きなハートを描きました。それは私の中では、「愛情」と「偏⾒がなくオープンにしていたい」ということを⼤切にしたいという想いがあったからなんです。そして⾃然が好きなので「⾃然との調和」を意識した緑をまわりに描き、ハートはあたたかい感じのオレンジにしました。するとハートの中に蝶を描きたくなってきたので、好きな⾊である紫を使って蝶を描いていたんです。すると今度はその蝶がメヴィウスの輪みたいになってきて。でも蝶を描きたいと自分は思っていたので描きつづけていたら、だんだんそれが今度は宇宙人の眼みたいに⾒えてくる。そしてその宇宙⼈の眼が私をみつめているような気がしてなんだか怖くなってきたんです。怖いから蝶に戻そうと、蝶の羽の部分の空洞に部分に白をのせたりして。すると今度はその白が卵にみえてきたんです。その時、蝶は「変容=メタモルフォーゼ」の象徴であることに気付いたんです。蝶って、卵から⻘⾍になって蝶になるという変容の象徴のようなものですよね。実は今日私がつけているこのネックレスも蝶なんです。これは、震災ですべてを失ってしまったけれどもそこから変容して蝶のように⽻ばたくようにという想いをこめてデザインされたチャリティネックレスです。この「蝶=変容」という気付きに救われて、「これは卵から変容していく蝶なんだ!」と理解したんです。私は、⾃然のようにとどまらずに色々変化したり成長していく存在を大きなハートで包んでいこう、と。

IOCA:すごいプロセスだったんですね。

そう、すごいプロセスだったんです。⾃分との対話を絵を通してやっていたという感じでした。描いてみないと自分にそんな恐れがあるなんて気付かなかったでしょうね。


鑑賞をするなかで

IOCA:それぞれの作品が完成した後にミニ展覧会をしましたよね。

nullあのお互いの作品を鑑賞するというのもすごくよかったです。⼈の絵を鑑賞するのも自分の絵を鑑賞してもらうのも。
個を尊重する場でありながらも、(みんな同じプロセスを経て)共有しているものがあるから孤独ではなくつながっているという安⼼感がある。ただ、全体として一体感があるといってもそれぞれは個性的で個々の自尊⼼も尊重されている、そういう場でしたよね。
⾃分の作品に対しては、「ドキドキする感じ」「宇宙人みたい」「とにかく進む」そういったコメントをもらったんです。どれも全部自分が描きながら進んでいったプロセスを感じられるコメントだったのでとても⾯白いと思いました。例えば「とにかく進む」というコメントについて、変化していくとか成⻑していくとか、(私が絵にこめた)気持ちを、コメントを書いた人は感じてくれたんだなあと思いました。
また、他の人の作品を鑑賞している時に、自分はわりとよいところをみようとする傾向があるなということに気付きました。⾃分の中で良い人になろうとする傾向があるというか。そこで、できるだけ正直で誠実であろうという意識をその時改めて持ったことをよく覚えています。
とはいえ、別にみんな誉めよう!と思っているわけではなく直感で思ったことを書いているだけなんですよね。そもそも絵やテーマも抽象的なのでほめようがないですし。そこも⾯白いところでした。

IOCA:実はスタッフのなかでは「参加者に対して誉めない」という決まりごとがあるんです。やみくもに何も考えずに誉めるってことは絶対しないんですよね。

それは⼦育てでも同じですよね。

IOCA:参加者のコメントも、別に誉めているのはなく感じたことを書いているんですが、受け⼿は誉められているように感じたりすることがあるようです。個として認められるって結局はそういう感覚なんだなと思いますし、そういうことを感じてもらえたのは嬉しいですね。


他の参加者を通して気付くこと

IOCA:他の参加者や作品について何か感じたことはありましたか?

null ありましたね。まず、いくつかの⾊の区画というかそれを使って「『すべての自分』を表現しようと思った」と言った男の⼦がいたんです。Kuniさんも「全部それぞれ聞きたいな〜~」と仰ってましたけど、まさに私もそう思いました。
あと、すごく気にいった絵があったんです。買いたいって思うような。絶対これはアーティストが描いた作品だと思ったら作者はサラリーマンだった。笑。
鑑賞ワークの場では、⾃分の感じた事や作者の想いを交換しながらも、その場では作者のバックグラウンドなどは関係なくやりとりが行われる。
だからそうした意外性があることも⾯白かったですね。
(EGAKU workshopは)すべてのプロセスにおいて洗練されていて無駄がなくてあたたかいというか。本当によかったです。


親⼦で参加する意義

小学校受験の時に子どもは”お教室”に行っていたんです。そこには⾃然体験やエクスカージョン(遠足)、お絵描きなどたくさんのカリキュラムがあるので、親はそこに子どもを送り込んでそれぞれのエキスパートにお任せしている感じだったんです。その場で⼦どもはたくさんの経験をして、「楽しかった」と⾔ってはくれるのですが、どう楽しかったのか、何をしたのか、そういったことは親が聞き出さないと出てこない。そしてたくさんの体験をしたとしても子どもって本当にすぐに忘れてしまうんですよね。多分どこかに蓄積していたりはするんでしょうけど。しかも、親は子どもと同じ経験をしていないから、想いを共有できなかったりわかってあげられない。どういうところでどのように感じてどう表現したかとか、どんなところでどのようにつまずくかっていうのをわかってあげられないところがあるんです。
⼩学校にはいると、親子でというより子どもだけで参加する活動が増えてきて、子どもだけの世界になってくるので、意識的に親子で関わりながら同じ経験を共有したい、そんな想いがありました。やっぱり⼦どもって覚えているんですよね、家族と一緒にやったことって。そんな⽮先にこのEGAKU workshopに出会ったんです。

IOCA:⼀緒に参加されたお⼦さんはどうでしたか?

とても楽しかったと言っていました。なにより、⼦どもたちは⾃分の作品をとても誇らしげにしているんです。下の子は⾃分の夏休みの⾃由研究はすでに完成していたのですが、それをやめて今回のEGAKU workshopの作品を自由研究として学校に提出したんです。「⾃分のこころを描いた」って。その時、自分の作品に対して他の⼈がコメントを書いたポストイットも含めて提出しようとして。

IOCA:コメントも含めて⾃分の作品というか。

そうそう。結局コメントはとって提出しましたが、「みんなからのコメントはとっておいてね」と⾔われたので、⼤切にとっています。学校から作品が戻ってきたらまたコメントを貼って家族の他の作品とあわせて飾ります。
null EGAKU workshopに参加して家族の絆が深まったような気がしますね。本当にいい経験をさせてもらいました。親として自分が真剣にむきあった姿、真剣に取り組んだものを子どもたちに⾒せるよいチャンスだったとも感じています。やはり親⼦で参加することはとても意味があると思いました。

IOCA:ありがとうございます。ちなみに親⼦参加ではあるものの、創作の時には敢えて親⼦は別の席となるようにしています。それぞれ⽢えることなく個として取り組めるようにという想いがあったのですが、それはどうでしたか?

それはとても⾃然でしたね。実は私は一度も顔を上げず、⼦どもや他の人のことも⾒ることはなかったんですよね。子どもたちもそれぞれ集中してこちらに来る事もなく取り組んでいたようです。


EGAKU workshopのススメ

IOCA:EGAKU workshopはどんな⼈が体験するとよいかと思われましたか?

いくつかあるのですが、やはり先にもいいましたが、⼦どもが幼稚園児や⼩学⽣でいわゆる「お受験」をしているママには特によいと思いました。とはいえ、どんな⼈にもどんな状況の人にもおすすめしたいですね。恐れがある人や傷ついている人にも。
パステルって暗い世界になったとしても修復していけるところがいいと思いました。光でキレイな世界だけがいいわけではないということが表現できたり、描き⽅や表現に自由さがあったりするのもとてもよいと思いました。
本当にこのワークショップは頭がよくてハートがある⼈が考えたという感じですね。EGAKU workshopは、子どもたちのリクエストもあるし、是⾮それぞれの学校でもやってほしいと思います。

IOCA:そう仰ってもらえるととても嬉しいです。是⾮色々な場で実現できるように頑張りたいと思います。 今⽇はお忙しいところありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

インタビューを通して、話はアートや美意識、こどもの教育、⼦育て、今後のEGAKU workshopのコラボレーションの可能性についてなど、様々な⽅向に深く広がりました。親⼦を対象とすることで、親と子どもにとってのそれぞれの参加意義についてIOCAとしても改めて気付きを得たインタビューとなりました。